自然食のお弁当と聞いて、どのようなイメージをお持ちでしょうか。
過去にオーガニックのお弁当を買ってみたものの、「なんだか味が薄くて物足りなかった」「冷めた状態だとパサパサしていて美味しくなかった」という残念な経験をされたことがあるかもしれません。体に優しい食事は味が犠牲になる、というのはとてもよくある誤解です。
東京・豊島区にあるオーガニックレストランの駒込ナーリッシュでは、毎日のテイクアウト調理において、そのようなイメージを払拭するための工夫を重ねています。植物性の食材だけでもしっかりとした満足感を得られる味付けのバランスや、時間が経って冷めた状態でも美味しく召し上がっていただける調理法は、現場での日々の試行錯誤から生まれました。
本日は、お店でお出ししている自然食の味わいを、ご自宅や職場でそのまま楽しんでいただくためのテイクアウトの裏側についてお話しします。食事のメインとなるおかずの工夫から、デザートとしてご用意しているオーガニックシュガーと小麦粉を使ったブラウニーのお話、さらにはご自宅での簡単な温め直しのコツまで、実務に携わるスタッフの視点から詳しく解説いたします。毎日の食卓に無理なくオーガニックを取り入れるためのヒントとして、少しでもお役に立てれば幸いです。
1. 冷めたお弁当でも美味しく食べられるオーガニック調理の秘密
テイクアウトのお弁当を持ち帰り、いざ蓋を開けて食べてみたら、ご飯が硬かったりおかずの味がぼやけていたりして、がっかりした経験はありませんか。
オーガニックの食材を使ったお弁当は、保存料などの添加物を使用しないため、時間が経つとどうしても風味が落ちやすいと誤解されがちです。しかし、実は調理の工程や味付けの基準を少し工夫するだけで、冷めた状態でも素材の美味しさをしっかりと引き出すことができます。
私たち駒込ナーリッシュの厨房でも、お弁当を作る際は「冷めたときの味のバランス」を一番に考えて調理しています。温かい状態と冷めた状態では、人間の舌が感じる塩味や甘味の強さが大きく変わるからです。そのため、料理のベースとなる自然塩やオーガニックシュガーなどの調味料を使うタイミングと分量を、店内でお出しする温かい料理とは意図的に変えています。冷めたときにちょうど良い塩梅になるよう、味の輪郭を少しだけはっきりとさせるのがポイントです。
また、お弁当箱という密閉された空間の中で食材の水分が移動してしまうと、全体が水っぽくなり、せっかくのおかずの食感を損ねる原因になります。これを防ぐために、野菜はしっかりと下ごしらえをして余分な水分をコントロールし、旨味だけを内側に凝縮させる調理法を採用しています。油っぽくならないよう、植物性の良質な油を適量だけ使用し、時間が経っても胃にもたれない軽やかさを保つことも重要です。
オーガニックの食材そのものが持つ力強さに頼るだけでなく、温度変化を見越した計算された味付けと、丁寧な水分コントロールを徹底すること。これが、冷めても美味しいお弁当を仕上げるための現場の基本です。体に優しい素材の風味を、ご自宅や職場でも最後まで変わらずに味わっていただくための、裏側の工夫と言えます。
2. 植物性のおかずは物足りないというイメージが変わる現場の工夫
「植物性のテイクアウトを食べた後、なんだかすぐにお腹が空いてしまった」というご経験はないでしょうか。お肉やお魚を使っていないからあっさりしているのは仕方ない、と片付けてしまうのは、実は少しもったいないかもしれません。
植物性の素材だけでも、しっかりとした満足感を引き出すためには、厨房での緻密な計算と工夫が欠かせません。その大きなカギとなるのが、旨味の掛け合わせとコクの出し方です。
動物性の出汁を使わない分、味の土台作りには細心の注意を払っています。昆布や乾物から丁寧にとった出汁を組み合わせることで、単調にならない複雑な旨味を構築します。また、味の輪郭を整え、全体のバランスをまとめるための隠し味として、オーガニックシュガーをほんの少しだけ使用しています。これにより、自然な丸みと深い奥行きが生まれます。
さらに、満足度を左右するのが油の使い方と食感のコントロールです。良質な圧搾絞りの植物油を適切な温度で活用し、野菜本来の甘みを引き出しながらコクをプラスしています。そして、根菜類をあえて大きめにカットして噛み応えを残したり、表面を香ばしく焼き上げたりすることで、脳がしっかりと「食事をした」と感じられるようなアクセントを加えています。
オーガニックの植物性素材をただシンプルに調理するだけでは、どうしても物足りなさが残ってしまうことがあります。だからこそ、一つひとつの食材が持つポテンシャルを最大限に引き出し、ひとつの料理として完成させるための試行錯誤を重ねています。食材の切り方、火の入れ方、調味料の重ね方といった現場の小さな工夫の積み重ねが、植物性料理のイメージを変える味わいへとつながっています。
3. 毎日の食卓に自然食のテイクアウトを無理なく取り入れるポイント
過去に自然食を日々の食事に取り入れようとして、途中で挫折してしまった経験をお持ちの方は少なくありません。私たち駒込ナーリッシュの店頭で日々お客様とお話ししていると、「体に優しい食事を心がけたいけれど、毎食すべてを自然素材で揃えるのは疲れてしまう」といったお悩みをよく耳にします。
自然食を長く続ける上で失敗しやすいのは、最初から完璧を目指してしまうことです。食材や調味料まですべてをオーガニックに切り替え、手間ひまかけて調理しようとすると、時間的にも精神的にも負担が大きくなり、結果的に息切れしてしまいます。そこで、日々厨房で自然食の仕込みを行っている立場からおすすめしたいのが、テイクアウトを上手く活用した「ゆるやかな取り入れ方」です。
ご自宅でご飯とお味噌汁だけはご自身で用意し、メインのおかずや手の込んだ副菜をオーガニックレストランのテイクアウトで補うというスタイルは、とても現実的で続けやすい方法です。自然由来の素材の持ち味を引き出す調理は、ご家庭で毎回再現しようとすると大変な労力がかかります。だからこそ、仕込みに時間のかかるお惣菜はプロに任せ、食卓の一部に組み込むという考え方にシフトしてみてください。
また、忙しい平日の夜や、どうしても料理をする気になれない日だけテイクアウトに頼るのも立派な自然食ライフの形です。肩の力を抜き、ご自身のライフスタイルに合わせて外からの助けを借りることで、食事の準備にかかるプレッシャーを大きく減らすことができます。
自然食は、決してストイックに続けるものではありません。無理のない範囲でテイクアウトを活用することで、体に優しい食事は特別なものではなく、日常に寄り添う心地よい食体験へと変わっていくはずです。
4. 食後の楽しみにぴったりなオーガニックシュガーと小麦粉のブラウニー
オーガニック素材を使ったスイーツと聞くと、「甘さが控えめすぎて物足りない」「少しパサパサしている」といったイメージを持たれる方が少なくありません。以前召し上がった自然派の焼き菓子で、どこか満足感に欠けると感じたご経験がある方もいらっしゃるのではないでしょうか。しかし、素材の選び方と配合のバランスを的確に整えることで、しっかりとしたコクと深い味わいを引き出すことが可能です。
私たちが駒込ナーリッシュの厨房で焼き上げているブラウニーは、あえて小麦粉を使用し、甘みにはオーガニックシュガーを採用しています。小麦粉特有のしっとりとした生地のまとまりや、熱を加えたときの香ばしさは、チョコレートの濃厚な風味と非常に相性が良いという特徴があります。また、甘みをつける際にもクセの少ないオーガニックシュガーを選ぶことで、カカオ本来の豊かな香りやビターな味わいを邪魔することなく、風味の輪郭を真っ直ぐに立たせることができます。
テイクアウトでお持ち帰りいただいた後、ご自宅でのティータイムでもしっかりとスイーツとしての満足感を感じていただけるよう、日々の調理プロセスで細かな調整を行っています。オーガニックレストランのメニューだからといって味わいを妥協するのではなく、それぞれの素材が持つ特性を素直に活かすことで、食後のひとときを豊かにする濃厚な仕上がりになります。素材ごとの役割を正しく理解し、理にかなった組み合わせを見つけることが、豊かな風味を作る大切なポイントになります。
5. お店の味をそのままご自宅で楽しむための簡単な温め直しのコツ
せっかくテイクアウトしたお料理をご自宅の電子レンジで一気に温めてしまい、野菜の水分が抜けてしまったり、おかずが硬くなってしまったりした経験はないでしょうか。
駒込ナーリッシュのキッチンで日々調理に携わる立場からすると、お店でお出しする状態に少しでも近づけるためには、温め方にちょっとした工夫を取り入れていただくのがおすすめです。
全体を均一に温めようとするのではなく、お料理の性質に合わせて熱の加え方を変えることが、風味を損なわない大切なポイントになります。
たとえば、衣のあるものや表面を香ばしく保ちたいおかずについては、まず電子レンジで内側を軽く温めた後、アルミホイルを敷いたオーブントースターで表面を短時間焼いてみてください。このひと手間で、サクッとした食感や香りがしっかり戻りやすくなります。
また、水分の多い煮物や炒め物は、耐熱容器に移し替えてふんわりとラップをし、低めのワット数で様子を見ながら少しずつ温めることで、食材本来のふっくらとした状態を保ちやすくなります。急激な加熱を避けることで、素材の縮みやパサつきを防ぐことができます。
オーガニックレストランならではの、素材の繊細な香りや味わいを最後まで美味しく召し上がっていただくためのちょっとしたコツです。
ご自宅での食卓がより充実した時間となるよう、お持ち帰りいただいた際はぜひこれらの方法を取り入れてみてください。

