オーガニックレストランと聞くと、体に良さそうだけれど「味が薄い」「特定の食材しか使わないストイックな場所」といったイメージをお持ちの方もいらっしゃるのではないでしょうか。過去に自然派のお食事を召し上がって、少し物足りなさを感じた経験がある方もいらっしゃるかもしれません。
駒込ナーリッシュの厨房で日々お料理に向き合っていると、お客様からそうしたオーガニックに対する率直な疑問や、少し敷居が高いといったお声を耳にすることがあります。私たちは、自然の恵みを取り入れながらも、決してストイックになりすぎず、食材の持ち味をしっかりと感じられる美味しいお食事を日々模索しています。
たとえば、野菜の仕入れ方一つをとっても、ひとつの形に縛られているわけではありません。スイーツ作りにおいても、あえて小麦粉を使用し、オーガニックシュガーで甘さを引き立てて焼き上げるブラウニーなど、美味しさと自然派のバランスを第一に考えています。
本日は、オーガニックレストランの現場で実際に私たちがどのように食材を選び、どのような考えでお料理やスイーツを仕立てているのか、よくある誤解を交えながらリアルな裏側をお話しいたします。自然派のお食事に興味があるけれど、自分に合うか少し迷っているという方に、私たちが大切にしているお料理への向き合い方を知っていただくきっかけになれば幸いです。
1. 「オーガニックのお料理は味が薄い」は本当?現場スタッフが直面するよくある誤解と味付けの工夫
オーガニックのお料理に対して「味が薄くて物足りないのではないか」というイメージをお持ちの方は少なくありません。過去に健康志向の食事を試して、少しがっかりされた経験がある方もいらっしゃるのではないでしょうか。しかし、オーガニックレストランである駒込ナーリッシュの厨房で日々調理に携わっている立場からお伝えすると、素材の持ち味を活かすことと、味が薄いことは決してイコールではありません。
私たちがオーガニック食材を扱う際、最も意識しているのは、調味料の強さに頼りすぎずに満足感のある味わいを引き出すことです。たとえば、料理やスイーツに甘みをつける際にはオーガニックシュガーを使用していますが、単に甘さを足すのではなく、素材そのものが持つ風味とどのように調和させるか、その最適なバランスを常に探求しています。強い甘みでごまかすのではなく、食材の輪郭をはっきりとさせるためのサポート役として調味料を活用するイメージです。
また、オーガニックのお料理が薄味に感じられやすい背景には、普段から強い旨味に慣れてしまっているという側面もあります。そのため、厨房では野菜や素材本来の味を凝縮させるために、火入れの温度や時間には細心の注意を払っています。調理の工程で食材の水分や香りをどうコントロールするかによって、仕上がりの満足感は大きく変わるからです。
さらに、物足りなさを感じさせない実務上の工夫として、自然な香りをアクセントにしたり、異なる食感を持つ食材を組み合わせたりすることで、味覚に立体感を持たせています。「オーガニックだから薄味でも仕方がない」と諦めるのではなく、自然の食材が持つポテンシャルを最大限に引き出し、豊かな味わいを表現することが、キッチンでの日々の役割だと考えています。
2. 契約農家からの仕入れにこだわらない理由。私たちがお店で大切にしている野菜選びのリアル
オーガニックレストランと聞くと、特定の契約農家から直接野菜を仕入れているイメージを持たれることがよくあります。しかし、私たちはあえて特定の契約農家という形をとっていません。
自然を相手にする有機農業では、天候や気温の変化によって収穫量や品質が大きく変動します。もし特定の仕入れ先だけに絞ってしまうと、どうしても野菜のバリエーションが限られたり、必要な時に必要な品質のオーガニック野菜を揃えることが難しくなったりするからです。
私たちが日々厨房で食材に向き合う中で一番重要視しているのは、「特定の農家からの仕入れ」という枠組みではなく、「その時期に一番状態が良く、力強い野菜を厳選すること」です。日本全国には、素晴らしい有機野菜を育てている生産者が数多く存在します。契約に縛られず柔軟な体制をとることで、季節ごとに移り変わる旬の味わいや、さまざまな土地で育った個性豊かな野菜を安定して確保できるようになります。
どこか一つの農園に限定しないからこそ、幅広いオーガニック野菜の魅力に触れることができます。日々変動する自然の恵みをしっかりと見極め、その時々のベストな食材を選び抜くことこそが、私たちがお店で大切にしている野菜選びの基準です。
3. あえて小麦粉を使うのには理由があります。お店で焼き上げる自家製ブラウニーの裏側
オーガニックレストランのデザートといえば、米粉を使ったグルテンフリーのものを思い浮かべる方が多いかもしれません。しかし、駒込ナーリッシュでお出ししているブラウニーは、あえて小麦粉を使用して焼き上げています。
オーガニックだからといって、必ずしもすべてのメニューから小麦粉を排除することが正解だとは考えていません。実務として日々食材と向き合う中で大切にしているのは、どのような素材を選び、それぞれの持ち味をどう活かすかという本質的な部分です。
ブラウニー特有の、表面のサクッとした歯触りと、内側のしっとり濃厚な食感を生み出すためには、小麦粉が持つ本来の特性がどうしても必要になります。食感や風味のバランスを細かく計算した結果、私たちが目指す理想の味わいを表現するための最適な選択肢が小麦粉でした。
また、甘みづけに関しても甜菜糖ではなく、オーガニックシュガーを採用しています。小麦粉の風味やカカオの豊かな香りをストレートに引き立たせるには、風味にクセのないオーガニックシュガーのすっきりとした甘さが最も適しているという結論に至ったからです。
世の中の一般的なイメージやトレンドだけで素材を選ぶのではなく、素材同士の相性や完成時の美味しさを逆算してレシピを組み立てています。一つひとつの素材を採用する理由を明確にし、お店のオーブンで丁寧に焼き上げるプロセスそのものが、私たちが大切にしている食への向き合い方です。
4. 甜菜糖ではなくオーガニックシュガーを選ぶ理由。自然派スイーツにおける甘さの考え方
自然派スイーツといえば甜菜糖、というイメージを持たれることが多いですが、駒込ナーリッシュではあえてオーガニックシュガーを選んでいます。理由は、素材の風味を最大限に活かしつつ、クリアで自然な甘さを引き出すためです。
甜菜糖には特有のコクや風味があり、それが大きな魅力です。しかし、調理の現場で繊細な素材の味をまっすぐに伝えたい場合、その個性が少し強く出すぎることがあります。たとえば、お店で焼き上げている小麦粉のブラウニーを作る際も、カカオの豊かな香りを邪魔せずに、奥深い甘さを表現したいと考えます。そうしたとき、甘味料自体のクセをどう抑えるかが実務上での大きなポイントになります。
私たちが使っているオーガニックシュガーは、化学肥料や農薬に頼らずに栽培されたサトウキビから作られています。過度な精製をしていないため、自然のミネラル分を残しつつも、とてもすっきりとした甘さを持っています。このすっきり感が、他の素材の良さをそっと引き立てる頼もしい裏方として活躍してくれます。
自然派の食事やスイーツを選ぶ際、特定の材料だけが正解なのだろうかと判断に迷われることもあるかもしれません。現場の視点でお伝えすると、どんな食材と合わせるか、どんな風味のバランスを目指すかによって、選ぶべき甘味料は変わってきます。それぞれの素材が持つ特性を深く理解し、表現したい味に合わせて最適なものを選択していくことが、甘さに対する考え方です。
5. 自然派のお食事選びで失敗しないために。レストランの厨房から見る食材の持ち味の活かし方
過去に自然派の食事を試した際、「素材の味を活かしているのはわかるけれど、なんだか味が薄くて物足りなかった」と感じた経験があるかもしれません。オーガニックレストランでの食事選びにおいて、そうした印象から足が遠のいてしまうケースは少なくないようです。実は、駒込ナーリッシュの厨房で日々オーガニック食材と向き合っていると、素材の持ち味を活かすことと、単に味付けを薄くすることは全く別のアプローチだと気づかされます。
オーガニックの野菜や調味料は、それぞれが持つ香りや旨味が非常に力強いという特徴があります。そのため、無理に強い味付けでごまかす必要はありませんが、だからといって調味料を極端に減らせば良いというわけでもありません。大切なのは、その食材が持つピークの風味をどう引き出すかという、現場での細かな調理の工夫にあります。
たとえば、野菜の甘みを引き出す際の火入れの温度や時間、そして全体のコクをまとめるために使用するオーガニックシュガーの分量など、厨房では食材の状態に合わせて微調整を繰り返しています。季節や天候によっても野菜の水分量や繊維の硬さは変化するため、決まったレシピ通りに作るのではなく、その日の食材の状態を見極めながら火加減や味のバランスを整えることが求められます。
自然派のお食事を選ぶ際は、「ただ薄味で味気ないのではないか」という不安を持たれることもあるかもしれません。しかし、本当に食材の持ち味を活かした調理がなされている場合、一口食べた瞬間に素材の奥深い旨味や心地よい香りが広がり、しっかりとした満足感を得られることが多いのです。食材そのものの輪郭をはっきりとさせながら、自然な調和をとる。それが、私たちオーガニックレストランの厨房で大切にしている食材との向き合い方です。こうした背景を知っていただくことで、自然派の食事に対する見方が少しでも深まるきっかけになれば嬉しく思います。

